ギフテッドの集い

ギフテッドの人達がより良い人生を送るために情報交換をするブログです

本を書いてみよう ー ヒトの物語(9)

こんにちは、やすくんです。




以前、「本を書いてみよう」と言う記事を投稿しました。
自分から見える世界を表現してみようと思います。一度に書くのはしんどいので、連載形式で挑戦します。




ーーー




ヒトの物語(9)




大気を引裂く轟音と共に、空が落ちて来る。
地上にいたモノ達の目にはそう映ったに違いない。それ程大きな塊が辺り一帯を覆う勢いで迫ってきたのだ。地表に接近するにしたがい、その塊の発する熱で草木は燃え、池や川は蒸発し、岩石は溶け始めた。楽園は突然その様相を大きく変え、まるで地の底が噴き上げて来るかの様に大きな地響きが起こる。ついに巨塊が大地に衝突する。衝撃波で一帯に存在していたモノは全て姿を消し、代わりに大きなクレーターとカオスだけがそこに残った。地は割れ、あちらこちらから溶岩やガスが溢れ出している。海では、天にも届きそうな巨大な津波が遠くの大陸に向けて次々と解き放たれる。空は土や灰、ガスなどで覆われ、雷光がその隙間から暗くなった地を照らしている。蛇と同じ爬虫類の遺伝子を持ち、それまで陸、海、空の覇者として君臨していたモノ達が、今はその威厳も矜持も失い逃げ惑う。恐竜と呼ばれたモノ達の最期。この星での五度目の生物大量絶滅はこうして起こった。


その様子を地球から遠く離れた天の川銀河辺縁部の惑星からモニター越しに見つめるモノ達がいた。その惑星「グ・エディン・ナ」に住むモノ「ラガシュ」達は長い年月をかけて高度な文明を築き上げ、一度は繁栄を謳歌した。テクノロジーは発展を極め、人工的に新たな生物を創る域までに至った。生命誕生の謎、そして進化の謎を解き明かすべく、この星の科学者達は様々な生物を創った。その中には当然、このラガシュに似せて創った生物もいた。ラガシュの身体を構成する物質と同じモノを使い、同じ様に創ってみた。しかし、外見の見事な再現性とは対照的に、内面は彼等と全く異なった。その生物はこのラガシュの様な高度な知性を持ち合わせていなかった。生物は知性を如何に獲得するのか。彼等の創作物は科学者達に次の課題を与えた。知性があまり高くないこの模倣品も、教育を施すことにより簡単な作業などが出来る様になることが分かってきた。しかし、高度な計算やコミュニケーションはいつまで経っても出来る様になる気配がない。科学者達は何年にも亘り研究を続けた。既存の生物達の知性について改めて調査をしてみたり、幼児の成長を観察してみたり、脳や神経のメカニズムを細部に亘り研究したりもした。その結果、高度な知性を獲得するためには、進化の過程で新たな脳内伝達物質を創り出す材料を外部から取り込む必要があることが明らかになった。この材料は特に珍しい物ではなく、とある果実に含まれている事もすぐに分かった。研究者達がこの果実をその模倣品に与える事を検討し始めた頃、議会からその事を禁止する通知が届いた。通知書を読んだところ、仮にこの模倣品が高度な知性を獲得した場合、それがラガシュ達にとって脅威となる可能性があるのではないかと言う懸念が出たとの事であった。確かに、新たな研究の成果はいつも何かしらのサイドエフェクトを及ぼす。例えば、外来種の魚を池に放すと、そこに元々いた魚や他の生物が増減する事は珍しくない。この模倣品に高度な知性を与える事によって、どんなサイドエフェクトが待ち受けているか誰も知らない。研究の成果を見てみたいと言う気持ちを押え、研究者達はこの果実を与える事を中止した。


それから数年後、ラガシュ達の運命を変える大きな出来事が起きた。ラガシュの科学者達が彼等の模倣品を創る前に、自分達と爬虫類の遺伝子を操作して人工的に生み出したモノが研究施設から抜け出し、偶然にもその果実を食べたのである。そのモノは間もなく知性を獲得し、研究施設にいた他の半爬虫類半ラガシュ達を連れ出して、同じ様にこの果実を食べさせた。そのモノ達もすぐに知性を獲得し、同類間で交配、急速に繁殖していった。そのモノ達は自分達を「ウンマ」と呼ぶ様になった。半ラガシュであるウンマ達は、ラガシュ同様に高い知性を持ち、平和的にグ・エディン・ナの市民権を得ようと努め、少しずつ社会に溶け込んでいった。そんなウンマ達にラガシュ達は複雑な感情を抱いた。あるラガシュの団体はウンマ達を自分達と同等に扱うべきだと主張した。しかし、別の団体はウンマ達をリスクとして見なすべきだと訴えた。様々な意見が飛び交う中、議会は「半ラガシュであるウンマ達も、ラガシュの子と同様に扱うべきである」と言う声明を出した。ウンマ達はこの声明を歓迎し、それから数百年間、遺伝的な先祖であるラガシュ達と共に、グ・エディン・ナの発展に貢献していったのであった。


けたたましく目覚まし時計が鳴る。寝惚け眼を擦りながら、また奇妙な夢だったなと彼は振り返る。「ノンレム睡眠なんて全然取れてないよな・・・。こんな夢ばかり見ていたら、日頃の疲れが取れないはずだ」最近、やけに疲れを感じる事を思い出し、そう呟く。食パンをトースターで焼き始め、コーヒーをコップに注ぐ。簡単に朝食を済ませた彼はネクタイを締め、玄関に立つ。「今夜はどんな夢を見るかな」顔に苦笑いの表情を浮かべ、玄関を出る。




ーーー




初めてなので文章はぎこちないですが、こうやって何かを考えるのってとっても楽しいです。どんどん自分の世界を表現していくのだ!