ギフテッドの集い

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本を書いてみよう ー ヒトの物語(7)

こんにちは、やすくんです。




以前、「本を書いてみよう」と言う記事を投稿しました。
自分から見える世界を表現してみようと思います。一度に書くのはしんどいので、連載形式で挑戦します。








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ヒトの物語(7)






部屋いっぱいに漂うコーヒーの香り。
昨夜は感情の波に飲まれて、ついつい深酒をしてしまった。そのせいで今日は身も心もシャキッとしない。気休めのコーヒーを飲み干し、パソコンの画面に目を向ける。


高校時代の担任の間違いを証明する様に、彼は志望した大学に現役で入学し、無事卒業した。その後、大手企業に入社した彼は、三年間勤めた後、好奇心の赴くままに海外へ渡る。その後の五年間の海外生活は彼を大きく変えた。異なる文化や思想、価値観は彼にそれまでの自分についてじっくり考えさせる機会を与えた。


ヒトは生まれた瞬間から脳に情報を取り込み始める。家庭で、学校で、街で、会社で。ヒトはある分野における経験や知識、文化などを取り込む際、その情報をその後の行動や思考の基準にする事が多い。しかし、それらの基準のうちいくつかは、他の場所では受け入れられなかったり、逆に、尊ばれたりする。ヒトとの接し方や感情表現、人格の尊厳や価値、人生観などについて、自分の今までのそれとは異なるモノを彼は海外で沢山吸収した。やがてその経験は彼に疑問を投げ掛ける。「自分がこれまで基準としてきたモノは果たして本当に基準として相応しいのだろうか?」


パソコンの画面上にはニュースの一覧が表示されている。昨日の都心での大規模停電や九州での地震、中東での紛争などが大きなサムネイルで並んでいる。それらの記事に隠れる小さな見出しを彼はクリックした。それはトラとライオンの交配種についての記事だった。トラとライオンは自然に交配することはないらしく、今回のケースは人工的である。「まぁ、どちらもネコ科の生き物だし、無理な組み合わせではないな」と納得する。その時ふと、彼は仕事で滞在したシンガポールのマーライオンを思い出した。マーライオンは上半身がライオン、下半身は魚である。「あれこそ無理な組み合わせだよな。ライオンと魚だぜ」しかし、世界の伝説にはマーライオン以外にも系統が全然異なる生き物同士の組み合わせが幾つか見られる。例えば人魚であったり、スフィンクスであったり、狼男であったりと、人間と何かを交配した様な生き物まで伝説には登場する。それらは神の創造物なのだろうか。


「そう、神だ・・・」彼は呟いた。昨夜の深酒の理由を思い出したのだ。


ヒトは太古の時代から自分達の知識や経験で説明できないモノを神の仕業とした。様々な自然現象や宇宙の創造、ヒトの運命、出逢い、生死・・・。神への畏怖の念が神話や伝説、宗教や信仰を生み出した。それらの中で神は絶対的な力を持っていて、ヒトはそれによって助けられたり、逆に、罰を与えられたりする。しかしながら、絶対的な力とは裏腹に、神話や伝説に登場する神々は必ずしも人間が考える様な崇高な存在では無い様にも解釈出来る。ギリシャ神話に登場する神々の様に、親と戦ったり、浮気をしたりするモノもいれば、釈迦の様に自分が宇宙で一番偉いなどと言い放つ者もいる。彼には、これらの神々は崇拝の対象と言うよりも、むしろ、軽蔑の対象としてしか考えられなかった。神と言うよりもヒト、それも程度の低いヒト、の様にしか考えられなかった。そして、彼はこれらのモノを「偽りの神」と呼ぶようになり、「真の神」と呼ぶべき存在はきっと別の者であって欲しいといつしか願うようになった。


宇宙の創造について、有名なホーキング博士は神を必要としないと言った。科学は観測出来ないモノの存在は認めない。科学によって解明されている範疇において、これまでに神が宇宙創造に寄与した事実はない。宇宙は純粋に物理の法則で創造された。地球の創造についても同様である。そこに神の介入が無いとすれば、ヒトも同様に神の創造物ではないと言う事だろうか?それでは神がヒトに与えただろう存在の意味も無いではないか!?しかし、ホーキング博士の意見に反論する材料を彼は持ち合わせてはいない。そもそも彼自身、神が一体何なのか分かっていない。しかし、何かが彼の胸に引っ掛かる。本当にヒトは単なる物理の法則の産物なのか?それとも・・・、ヒトは特別であり、やはり神が何らかの目的を持って創造したのであろうか?


パッと答えの出ない問いを前にすると、彼は何時間にも亘って考え込む癖がある。酒は彼の思考の強さと深さを何倍にも強化する。未だ解明されぬ神秘に対する好奇心が、大きな感情の波となって彼を捕らえ、漆黒の大海原へと押し流す。今夜もまた、深酒になりそうだ。






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初めてなので文章はぎこちないですが、こうやって何かを考えるのってとっても楽しいです。どんどん自分の世界を表現していくのだ!